僕はここにいる

僕はここにいる (講談社X文庫ホワイトハート)

僕はここにいる (講談社X文庫ホワイトハート)

読了。勢いで買ってしまったホワイトハート。絵がないから特に何も変わってませんが。

「……それに」
「それに?」
「人には、それを乗り越える、力があるから」
乗り越える、力――。
あたしもいつか、越えられるんだろうか。こんな、好きになるほど哀しくなる、こんな気持ちを。苦しい思いを。

はじまりは、瓶の音だった。夜の庭に響く、聞こえるはずのない音。中一の春。新しい町で幸せに過ごしていくはずだったのに、いつしか家の中には険悪な空気が流れ、そしてある夜、それは、哀しい空気へと変わってしまった。なす術もなく立ちつくすあたしの前に現れたのは――。


なかなか良い感じ。
うん、やっぱこの作者は好きですよ*1。「心に沁みる、せつなく美しいファンタジー」 という文句は伊達じゃありません。「クリア・ヴォイス」 でもそうでしたが、主人公の心の動きが巧みに描かれるのが良いですね。特に146頁「フェレの体を作ったから。だから」 あたり。不安で、声が震えて、っていうのがよく伝わってきて、不覚にも泣きそうになりました。
ただ、ファンタジーな要素が浮いてる……というか、「色の反転師」 なんて急に言われても、って感じです。まあ少し後でさらにファンタジーな要素が出てくるので、気にならなくなりましたが。


古い本がいくつかあるみたいですが、流石にそれに手を出す気はないので……出ないかなあ、新刊。




余談。
表紙が、遠目に見て何かの樹木かと思ってたんですが、よく見たらこれ足とスカートと陰ですね。フェレもいるし。

*1:まだ2作しか読んでませんが。近著がこれ除外すると(これは※95年の再販) 2冊だしなあ……。「夏空に、きみと見た夢」 も読んでみたいですが、ヴィレッジ・ブックスを見かけません。