みすてぃっく・あい

みすてぃっく・あい(ガガガ文庫 い 3-1)

みすてぃっく・あい(ガガガ文庫 い 3-1)

読了。

少しだけくすんだ無機質な銀色の光沢を私は知っている。人の肌を拒絶するかのような冷たく硬い感触を知っている。回しはじめる瞬間の一度ひっかかる手ごたえを知っている。かすかに軋むこの金属的な音を知っている。ノブからわずかに眼を逸らして自分の手首を見ていたのを憶えている。細い手首に薄く静脈が浮かんでいたのを憶えている。回しながらひとつ大きく深呼吸したことを憶えている。掌のなかでノブが緩やかに回って正確に四十五度ぶん回転したのちカチリと止まる感覚を知っている。
それらすべてを私は憶えている。

ぼけぼけおっとりの沖本部長に読書魔の天才・三輪先輩、あっぱらぱーの門倉せりか、そして優柔不断な私・久我崎蝶子。私たちはひたすらに戯れる――ピクニックをしたり、チェスをしたり、いっしょにお風呂に入ったり。けれど、蛇行をつづける他愛のないおしゃべりも、ぼんやりとした空想に耽る時間も終わるだろう――。


これは面白い。あまり見たことのないタイプですね。
というか、昨日読んだのが「生徒会の一存」 だったので、あまりに思考的な文章との差に思わずくらくらしてしまいました。つまり、「ライトノベルだけど軽く読めないタイプ」 です。ページあたりの文字数が多いです。
というかイラストとタイトルが読んで感じた印象と全然違うんですが……っ! 私は、電車の中で読むときはイラストを隠しながら読む(チキンな) ので、読み終わってからイラストに目を通したんですが……想像してた彼女たちと明らかに齟齬があります。ていうか……萌え萌えしすぎてます。ライトノベル的には正しいんでしょうが、この作品単体としては否定せざるを得ません。タイトルも投稿時の原題「虚数の庭」 の方が10倍しっくり来ます。
しかしそれは私が、ところどころ挿入される観念的な話に重きを置いてるせいで、序盤の百合百合っとした話が面白かった人には違和感ないのかもしれません。


ときどき太字が使われてるんですが、それが効果的に思えた、なかなか稀な作品。次はメイドの話ですか。……期待。