ゴールドベルク変奏曲

ゴールドベルグ変奏曲 (HJ文庫)

ゴールドベルグ変奏曲 (HJ文庫)

読了。

だが、オルガ。
彼女を思うと体じゅうが火になった。会いたいと思い、抱いてなぐさめてやりたいと思い、彼女にあんなまねをした者への憎しみに腕も指もぴくぴく震えた。それはとうてい死人の持てるものではなかった。
おれはオルガを愛してる。どうしようもなく、そう思った。

妙なる調べは視覚となり、紡がれた幻は現実と交錯する。<幻奏>――それ以外に取り柄のないオルガに、至高の奏者・文殊のコンサートで彼に花束を渡す役目が回ってきた。だが事件はそこから始まる……。


さすが五代ゆう
厚みというか、貫禄が違いますな! とか思ってたら、デビュー前に書いた未発表作だとか。あ、そうですか……。内容は、SFファンタジー+刑事モノ的サスペンス。五代ゆうは剣と魔法のファンタジーしか読んでなかったので、少し新鮮でした。
二人が出会って惹かれあっていくところとか、離れてお互いを思いあうところとかは、あとがきにもあるように「<骨牌使い> の鏡」 に通じるものがありますね。そんなところも良かったんですが、ラストのコンサートが圧巻で、311頁「そうあるべきだった。みんな、そうあるべきだったのだ。魂の中で、人々は泣いた」 あたりは切なすぎて泣けてきます。


五代ゆうアーカイブス1作目。次の「はじまりの骨の物語」 で止まってるようですが、色々と出してほしいものです。