私の男

私の男

私の男

読了。やっと読み終わった。長かった。

「そいつに、罪を償わせたい」
ふいに声がつめたい笑いを含んだ。
「俺は、陸のおまわりさんだからな……」
田岡はおかしなことをつぶやいた。言葉の端が抑えた笑いに軽く震えた。
「は?」
「いや、なんでもないよ」

――お父さんからは雨の匂いがした。互いに何もかもを奪い合う父と娘。二人は暗い北の海の過去から逃げ出す。そして今も、ずっと二人きりで逃げている。 ――生きるために。


うっわ。濃い。
物語は2008年、”私” である腐野花の結婚から始まります。ここから逆順に、過去を遡っていくわけですが……もう第一話から話が濃いです。ドロドロしてます。グチャグチャです。そんなわけでストーリーがほとんど見えてこず、そのくせ灰汁は強いので、読むのが非常に辛かったですね。
ところが、その「ドロドロとしているものの謎」 が、読み進むごとに(過去を遡るにつれ) 解きほぐされていくわけです。『どのような経緯でそうなったか』 というのを追体験していくんですね。なんだかミステリっぽい構造ですよ。なんでしたっけ。直木賞でしたっけ。よく知りませんが。
で、つまり、『複雑に絡み合ってドロドロに見えたものが、起源を辿れば、一本の純粋な”何か” から生まれていた』 という、まさに「チェイン・ギャング」 なわけなんですが……なんだか、第一話ではひたすら重かった話が、終わってみると少しではありますが、爽やさすら感じました。凄いですね、これは。時系列順に載ってたらひどいことになってたと思いますが(笑)


なんとも、もはや、圧倒的。こんな人が「GOSICK」 書いたらどうなるのか、期待と共に少々不安でもあります。もちろん9割方期待ですが。