雨恋 amagoi

雨恋 (新潮文庫)

雨恋 (新潮文庫)

読了。まだ新刊売ってなかった……。

夢を見た。眠っているぼくの身体に誰かが、やわらかい羽根でできた毛布をかけてくれている。
布団ではなく、羽根そのものを集めて織った毛布。色は蜂蜜のような金色。現実にはあるわけがないし、目をつぶっているのに色までわかるのもおかしいが、夢なのだからしかたがない。
これまでに知っているどんな毛布よりも軽く、やわらかく、暖かさはそれほどではないけれど、まさに夢そのものみたいに心地よかった。

ある晩、マンションの居間で、何もないところから声が聞こえた。猫と遊ぶ、うふふという笑い声――。自殺したとされるOL・小田切千波の幽霊となった姿だった。だが彼女は、何者かに殺されたのだと訴える。ぼくは彼女の代わりに、事件の真相を探ることになる……。


面白かった。
そして「まだまだ続きがある」 と思ってページをめくったら残りは解説ページだったときのがっかり感は異常。これが余韻って奴ですか……! まあクライマックスにしていかに盛り上がっていたか、という尺度にはなりますけど。
千波は、雨の日にしか現れない幽霊で、地縛霊らしく一定範囲しか動けず、持ち上げられるものは新聞紙程度という無力な存在。初めは我が家にいる他人の存在に、居心地の悪さから事件を調査する主人公ですが、調査が進むにつれ進行する”あること” により、千波のことを意識し始める……。
と、この”あること” がなかなか面白くて、話が進むにつれて二人の関係が変化していくのが良かったですね。最終的に297頁「ああ、やめてくれよ」 なんて弱々しく言ってしまう辺り、ドキドキものでしたよ。


猫には何かが見えているとよく言います。我が家の猫はそれこそ子猫だった頃には虚空を見つめて鳴いてたりしましたが、今ではさっぱりです。いなくなったんでしょうか……。