銀河不動産の超越
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/05/29
- メディア: 単行本
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「優しい方」 もう一度、彼女は私に抱きついた。
じっと我慢をする。私がまだ小さい頃、家に犬がいて、母がその犬をいつも抱き締めていた。その犬の気持ちが今わかった気がする。もちろん、悪い気は全然しない。ただ、どうしたら良いのか、という点においては、私は犬以上に悩んでいる自信はある。
これまでの人生、怠けられるだけ怠けて過ごしてきた――。銀河不動産の新入社員である”省エネ青年” の運命が、ある日一転する。
うん、面白かった。
まあ、客観的に自分を見つめるタイプの主人公なので、いつもの森博嗣ですよ。話としては、かなり広い貸家*1に格安の家賃で引越をすることになった主人公が、次々と出会う不思議な客に翻弄される……って感じですかね。
いくつか章がわかれているんですが、面白くなってくるのは「銀河不動産の忌避」 からですね。正に翻弄の極みで、主人公が混乱してる感じがかなり可笑しいです。ぶっちゃけ「ちょっと現実味のある”押しかけ女房”」 ですが。出会ったばかりの時の、168頁「このままでは、地球に帰れなくなるのではないか」 なんかは特に楽しいです。
しかし、主人公の反応的にメインヒロインはどう考えても佐賀さんですよ。184頁「いつ結婚するの?」 は(テンプレだけど) 大笑いしてしまったり。最後まで読んで、なんだか本当に宇宙人のような気がしてくる人物でした。
満足満足。こんな家に住んでみたら楽しそうですよ。
*1:イメージとしては、公衆トイレのような小さい建物を、二階建てくらいの高さの一回り大きい建物で囲った感じ。公衆トイレに当たる部分はキッチン・バスルームで、他は吹き抜けのがらんどう。