クレィドゥ・ザ・スカイ Cradle the Sky

クレィドゥ・ザ・スカイ―Cradle the Sky (中公文庫)

クレィドゥ・ザ・スカイ―Cradle the Sky (中公文庫)

読了。こっちも新カバー版。フーコと……誰だろう?

早く大人になりなさい。
子供は不十分な存在で、大人だけが人間としての完成形だと、子供に信じさせようとする。騙された子供たちが、大人になることで悩み、そして時分を傷つける。沢山のものを失って、大人へ堕ちていくのではないか。
子供のままでいた大人はいないのだ。
それを実現するものは、死しかなかった。
唯一の例外が、死と、僕たちだ。

僕は病院を抜け出した。そして身を寄せたフーコとともに、どこかへ行こうとしている。もう戦闘機には乗れないだろう。だが、いつでも空には還れる。目を閉じれば、クリアな空が目の前に広がっている――。


完全に油断してた
そうですよ、森博嗣はこういう奴も絡めてくる作家でしたよ。キルドレの人生観は既刊3冊を通してもう完全に浸透してますので、「ここらで何か違う展開があってもいい」 くらいは考えるべきでしたが……前回の「フラッタ」 が微妙な終わり方だっただけに、想像もしてなかった展開です。最初読んだラノベから7年、食傷が進むくらいには娯楽小説を読んできてますので、「さすがに(※重要ネタバレ)”叙 述トリックなんて半分読めば気付く” だろう」 なんて意識があったのか、まったくの予想外でした。
読み終わってからページをぱらぱらめくって、最初は、113頁「僕を撃ちにきたのは、誰だったっけ」 が”クリタの最後の夢で、切り替えポイント” かな、とか思いましたが……カフェで絡まれるシーンや、73頁「もう一回くらい、なんか、騙されてみたいなって……」 が”クリタとの逃避行の終わりに対する、フーコの認識” と考えると、最初から最後までアノ人でしたよ。
他に印象に残ってるシーン。67頁「話しているうちに、とても幸せな光景に思えてきた。幸せすぎて、悲しくなるくらいだ」 ああ、やっぱ切ないよなあ……とか呑気に思ってた自分ホント馬鹿。263頁「ああ、人間たちはみんな馬鹿だ。この飛行機の、この美しさを見ろ。この翼を見ろ」 まさに羽根を得たような気分で、懐かしさに涙さえ浮かんできます。


さて、残すは「スカイ・クロラ」 のみ。次も期待。




余談(※重要ネタバレ)。
スカイ・クロラ」 はちょっと昔に読んだので、結末をぼんやりと覚えていて、「ナ・バ・テア」 を読んだ後には『スカイクロラって、割と超展開だったんじゃ……』 なんて思ってましたが、今では、「ああ、やっとか」 という、ごく自然な流れに思えます。
……あれ、ていうか、時系列は「ナ・バ・テア」→「スカイ・クロラ」 の一本線で、”草薙はこれから本当に死ぬん” だよね? 実は「スカイ・クロラ」 は「フラッタ」 と「クレイドゥ」 の間で、”スカイクロラ」 の『死ぬ』 は「クレイドゥ」 で覆される『死んだ』” じゃないよね? どっちだろう。どっちでもいいよね……。


これで、私の記憶が曖昧で”スカイクロラ」 で草薙が死ぬ” のは勘違いだったとしたら、大笑いですが。