モダンタイムス

モダンタイムス (Morning NOVELS)

モダンタイムス (Morning NOVELS)

読了。

人は知らないものにぶつかった時、まず何をするか?
「検索するんだよ」

ゴールの見えない仕事。何も理解してない上司。システムエンジニアである以上、誰もが感じる不満を、渡辺もまた感じていた。そんなある日、頼れる先輩である五反田が失踪した。仕事を引継いだ渡辺は、こんな簡単な仕事で先輩が逃げ出すなんて信じられなかった。そして――。


面白い!
さすがに「ゴールデンスランバー」 の激動っぷりには劣りますが、それでもやっぱり面白い。これぞ伊坂作品ですよ。そしてこの作品で気付きましたが、大体どの作品も頼れる兄貴(姉貴) 的ポジションのキャラがいますね。だから何って話ですが。
今回は「ゴールデンスランバー」 と並行して書かれたということで、似通っている部分がいくつかあります。その一つは「物の見方は一つではない」 ではないでしょうか。今回、序盤では”恐怖の対象” だったキャラたちが、中盤以降で”頼もしい味方” となっていくのが面白かったです。189頁「いびつな三者会談がはじまる」 のシーンなんか特に好き。化学変化というか、思いもよらぬものが出来上がりそうな、楽しい予感がしました。
そして、ああ、何より、これが(重要ネタバレ)”「魔王」 の続編” だってこと! ちょうど”漫画版の連載では潤也編” に突入したところで、興奮冷めやらぬといった状況ですが、まだまだ話が続いていたことに感動です。334頁「考えろ考えろ」 とか”腹話術” とか、”マスター再登場” とか! この辺りの、ホテルでの一連のシーンは、楽しくて楽しくてたまりませんでした。476頁「ルームサービスです」 とか。伏線の超ロングパスにニヤリとしたのも久しぶりです。


読むのに6時間くらいかかりましたが、かなり満足です。そして”漫画版” がさらに楽しみになってきましたよ。上手に remix されていて既読者にも文句のない出来。そちらもお勧めです。




余談1。
333頁「大事なルールとそうじゃないルール」 ここのくだりは普段考えてることと全く同じで、びっくりしました。子供に対する考えも。


余談2。
作中で井坂幸太郎なる作家が出てきて、好色の限りを尽くしたり主人公に協力したりと、わりと頻繁に登場するんですが……あとがきで「単純に筆名を考えるのが億劫だった」 と書かれています。……。それならそうと先に言って!
この作家のあまりにひどい馬鹿っぷりに、あえてそんな風に貶めて書いてるんだな*1とは思いましたが、それでもやっぱり井坂=伊坂はイメージとして刷り込まれます。するとなんだか、井坂だけがメタ的な存在に思えて、364頁「届くかもしれねえ。どこかの誰か、一人」 なんかは、結構なシリアスシーンにも関わらず、反応が薄くて戸惑いました。普通の名前だったらもっと感動的だったのに! と嘆かずにはいられません。

*1:こんな酷い人間そうそういないよなあ→井坂≠伊坂だろうなあ、という想像。