ぼくと、ぼくらの夏 新装版

新装版 ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫)

新装版 ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫)

読了。

「父さんがなぜ刑事をやっているのか、母さんは最後まで、知らなかったんだろうね」
「もちろんちがう意見のやつはいるさ、警官にも泥棒にもな」
「それだけ分かってるのに、なぜ女心が……」
「世の中は分業するようにできてるんだ。女心のほうは、おまえに任せてる」

高校二年の夏休み、同級生の女の子が死んだ。刑事の父親と二人で暮らす僕は、友達の麻子と調べに乗り出したが……。


ああ、やっぱ面白い。
ってもう、樋口有介の本を読むといつも言ってると思いますが。でも、これからも多分言い続けるでしょう。だって面白いんですから。
今回の探偵は高校生。しかし10代らしからぬその性格は、いつもの樋口有介の主人公とほとんど変わらないくらい。元カノ*1からかかってきた電話に、「だけどあのときは、二人とも頭に血がのぼってたじゃない」 「今はのぼってない」 と一蹴するあたりなんかは、ついニヤケてしまいます。いかにもハードボイルド! って感じですよね。
以下コメント。133頁「お袋さんの名前をなぜ父さんが知ってるのさ」 ここはすごい笑いました。頭のいい主人公が、どうでもいい冗談に知恵を働かせるのって好きです。235頁「どうしてもイワシ丸干しが食べたければ、女になんか、惚れなければいい」 これ、これがまさに樋口有介って感じの文章ですよ。305頁「二度と会えん女はいる。若かろうが、年寄りだろうが」 ここから急に解決編に入るわけですが、前章と比べて明らかに父のトーンが下がっているのが物悲しいですね。


麻子との話がエピローグにあるかと思っていたので、最後でちょっとがっくり。なるほど、キャラ同士の関係性が小説の多くの部分を占めるのがライトノベルなんだなあ、と思った次第です。

*1:なんて言い方をしない時代の話ですが。