ペンギン・サマー

ペンギン・サマー (一迅社文庫)

ペンギン・サマー (一迅社文庫)

読了。久々のタイトル買い。

「それが事実なら、そいつらはものすごい科学力を持っていることになるが」
俺が指摘すると、グギギの頭が頷くように沈んだ。
「そういうことになる。この俺に人間並みの分別を与えてくれたんだからな。もう俺は鳥頭なんかじゃないぜ」
小さいながら、俺は驚きを覚えた。グギギは冗談を言えるのだ、という事実に。

幼なじみに付き合わされて、街に古くから伝わる伝説「クビナシ様」 を探すために白首山へ登る羽目になった。迷った末にたどり着いた、朽ちた墓地。そこで見つけたものは……。


これは面白かった!
ネタバレが多くなるので詳細は伏せますが、まず章ごとに印象が違うのが驚き。幼なじみとハイキングしたかと思いきや、次の章でローカル伝説の検証本(という体) になったり、はたまた×××××との共同生活エピソードなど、くるくるとイメージが移り変わります。いい所で章が終わったかと思ったら、次は全く違う雰囲気になってたりして、なかなか新鮮でした。ちなみにその中でコメディ色が強いのが「秘密結社赤面党の作戦会議」 で、『秘密結社』 という単語から想像していたのとはちょっと違った連中(というか2人) に笑ってしまいました。
そして各章で断片的に書かれたことがエピローグで繋がっていくわけですが、これが結末をハッキリ書かずに読者に想像させる、ライトノベルでは比較的珍しいタイプの終わり方だったんですよ。懇切丁寧に解説するタイプが多いのはライトノベルとしては宿命なんでしょうが、やっぱり自分で気付いた方が面白いですよね。
ちなみにエピローグを読んでから私が気付いていった過程は、”赤面党とグギギが白髪鬼とクビナシ様だったのか! → そういえば解放された娘たちは、産業革命以前の時代で空気が綺麗だったから解凍できて、交配の過程で耐性ができて現代に至るわけだなあ → あと銀のゴキブリ型パイクロー爆弾って時限設定300年じゃね? 爆発してね? → あ、山中での爆発ってそれのことか!” こんな感じでした。楽しかったです。


この作者は初めてだったんですが、なかなかいいかもしれません。次に新シリーズが出れば買ってみましょうか。