メイド刑事 9

読了。

『あの人や、他にもあなたたちに助けてもらったという人たちが連絡をとりあって、真実を人びとに伝えようとしているわ。ひとりやふたりでは危険でも、いろいろな分野や場所に分散して活動している人間をみんな、黙らせることができるとは思わない。私たちにも、それなりの自信があるのよ』
「松本さん……」

メイド刑事、若槻葵はいなくなりました」 眼鏡をはずし、髪を一振りしながら、葵はきっぱりと宣言した。ただ「面白いから」 という理由で大切な人々を傷つけ、そして殺した、善香と決着をつけるために――!


最終巻。これは熱かったです。
正面切って攻めてくる黒須善香に、だんだんと追い詰められてくる葵たち。”護衛の刑事までもが……” という展開には正直、興奮しました。なんというか、今までの敵たち(貴美香とか) は悪と言っても引き際を心得ており、そのために強硬な手段では攻めてこなかったので、どこか物語的な安心感*1があったんですよね。ところが今回……”刑事を殺しまでして変装し、ルカを撃った” あたりで「やばい、こいつらは本気だ!」 と思わざるをえませんでした。これで一気に引きずり込まれましたね。
ただ、208頁「十年前、私はこの娘に取り憑いた」 は……正直予想外というか、「え、ちょ、そんなオチなの? え?」 と一気にトーンダウン。いやまあ、昔なつかしのドラマ的展開としてはアリかもしれませんが、ライトノベル読みとしては”人々の怨念が集まった云々” なんて数多ある雑魚にしか見えません。もっとこう、”アラブと日本の関係が悪化し石油が供給されなくなったことで、利益を得る誰か” が黒幕でも良かったんじゃないかなとは思うんですが、それはそれで物語の印象が違ってくるでしょうね……。純粋に”日本壊滅” が目的であるなら、これが妥当な落としどころかもしれません。
以下コメント。88頁「言いながら、梶はかすかに微笑んでいた。なぜ?」 いいですね。こういう機転を利かしたアドリブって好きです。98頁「人けのないお屋敷がどんなにうつろなものか」 これもいいですね。なくなってしまった日常の風景を見て固まる決意。熱いです。144頁「この混乱の中で、自分の立場も手柄も、何も考えずに『事件』 を追う警察官がいるのだ」 いやあ熱い熱い。ピンチの時だからこそ援護が頼もしい。184頁「そのとき私を支えてくれるのは、葵、お前だと思う」 ……き、キ、キタ━━(゚∀゚)━━!!!!! イヤーオゥ!


そして、”ほんのり温かいラスト” を見て、上記の問題のシーンも読み返してみると、そう気にならないかな……と思い直してみたり。些細なことですよ。うん。




余談。
個人的には、”警察でさえも海堂と葵を見失った” というより、返り咲いたトップの人あたりが指示して、『そういうことにした』 ってのがしっくりきますが、まあそこまで説明すると蛇足ですかね。

*1:どうせ倒すんだろ、とか、どうせ大怪我しても助かるんだろ、とか。