カラクリ荘の異人たち 4 〜春来るあやかし〜

カラクリ荘の異人たち 4 ~春来るあやかし~ (GA文庫)

カラクリ荘の異人たち 4 ~春来るあやかし~ (GA文庫)

読了。

くるくる、くるくると、采奈の表情はなんてよく変わるんだろう。大きな目が動いて、唇を尖らせたり、笑ったり、泣いたり、真っ赤になったり。素直で、わかりやすくて。まるで、子供みたいだ。
――今までだって彼女は、ずっとそうだったのに。
ずっと、彼にありったけの想いをくれていたのに。


 泣 い た 。
激情でも何でもなく、沁みいるように泣いた本は久しぶりでした。主人公・太一の抱える問題が、4巻かけて、ゆっくりと丹念に解きほぐされていって、最後にほろりと融ける。その様を丁寧に描かれたら、そりゃもう泣くってもんですよ。3巻までは「なんとなく雰囲気が好きで読むのが楽しみな本」 くらいの意識でしたが、今回、その「なんとなく」 の部分が表出していたような気がします。
以下コメント。19頁「(まあ、あるよな、そういうこと) 人が壊れるのは、簡単なことだから」 この厭世観、しかも強い(意識的な) 厭世じゃなくて無意識なのが良いですね。何もかもが当然と思ってる。67頁「『今北京にいる』 と連絡があったきり、音信不通だ」 これは笑った。日本的な怪談がグローバルで起こったら。210頁「まるで、太一の胸の中にある痛みを知っているみたいに」 アカネちゃんいい娘。298頁「――そう、思っていた。ずっと」 316頁「大丈夫。もう、怖くない」 320頁「仕方がなかったのだと、相手を許すためにそう思うことだって、できるんだよ」 ああ……。素晴らしい。このシリーズを好きになっていた理由が、その源泉が、ここにありました。


いやもう本当、良かったです。これはもう心の傑作選に入れとくレベル。