捨て猫という名前の猫

捨て猫という名前の猫 (創元推理文庫)

捨て猫という名前の猫 (創元推理文庫)

読了。

「好きなカレシができたとかなんとか、そんな感じ。小さい紙で指輪なんかつくってね。あたしがそれなにって聞いたら、お守りだって。大事なことを紙に書いて指輪にしておくと、いいことがあるんだって」


くぅーっ。面白いなあ!
帯の「少女たちの強い絆が 柚木に深い悲しみを背負わせる」 がまさにピッタリの文言で、捜査が進むにつれて度々その悲しみが襲ってきます。特に上記の引用あたりや、麦の幻覚が無言でこちらをにらんでくるあたりが良いですねえ。既刊シリーズで一番切ない話だったんではないでしょうか。
以下コメント。18頁「ママにはそう伝えておくよ」 といっても、娘の加奈子や、27頁「わたしを、本気で、怒らせる気ですか」 直海とのコメディみたいなやり取りも十分にあって楽しいです。169頁「俺の人生が赤面する」 この表現がなんとなくツボ。単純な「情けない」 でなくて、それに加えて情けなさを距離を取って客観的に見つめてるみたいな。


永遠の38歳なんてシリーズだったんですね。終わりがなさそうでちょっと不安かも。完結ですって言われるのもアレなんですけど、いつの間にか新作が出なくなってフェードアウトよりはマシかなあ……。