ブラッド・スクーパ The Blood Scooper

ブラッド・スクーパ - The Blood Scooper

ブラッド・スクーパ - The Blood Scooper

読了。

「何故、負けたのだろう」 彼は呟いた。「わからない。教えてもらえませんかね」
再び顔を近づける。
「何故、負けないと思ったのですか?」 逆に尋ねてみた。
「負けないと思ったか?」 そこでゆっくりと笑った。「それは、ああ、面白いな。そうだ……。どうしてだろう。負けないと思いましたよ」


うん、面白かったです。
いやあ、森博嗣は本当に期待通りの面白さですね。スカイ・クロラシリーズと同じ中央公論新社の出版で、雰囲気的にはそれを受け継いでいるんですが、キルドレたちの空戦よりは刀での斬り合いのほうが想像がしやすくて、個人的にはこっちのほうが好きです。空戦のターンがどうのって、知識がないと分かりにくいですしね。
以下コメント。114頁「呼吸を整え、切っ先に心をのせる。/(以降は/が改行) ゆっくりと、重さを感じ、そして重さを忘れ、/ 静かに、風を切る。」 本当、この文体って好きですわー。なんかすっと頭に入ってくるんですよね。なんだろう。1行1行が、漫画の1コマに対応した印象かもしれない。133頁「彼女が見ているのは、鏡に映った自分なのではないか」 そうか、その発想はなかった。人は良くも悪くも相手に合わせて自分を変えるんだもんね……。245頁「あまりにも、あっぱれ。/ 見事だった。/ 言葉にできるのはそれだけだった。」 259頁「なんという正論。/ なんという慈悲。」 270頁「自分の躰はけっして自在なものではない。/ 否、それどころか。/ 自分が考えること、感じること、思うことさえ、自在ではない。」 281頁「それは、バサカとの戦いで得たものだったからだ。/ 相手と戦うのではない、己の死と戦う。/ 己の醜さを斬るのだ。」 戦いの描写と、それに関するゼンの思考。なんだろう。何が面白いって言葉にできないけど、強いて言えばこのゼンの”気づき” が面白い。達人になる過程でも見せようっていうんだろうか……。


まーた厨二的なタイトルでも付けちゃって、なんて思ってたけど、タイトル通りのブラッド・スクーパでした。いやあ、これはハードカバーでも追いかけていきたいシリーズ。次も期待です。